21世紀のコミック作家の会

「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」設立宣言

戦後55年、多くの先達の努力と読者の方々の支持により、漫画文化は発展してまいりました。そしていまや、世界に通用する日本を代表する文化のひとつにあげられるほどに成長いたしました。しかし、21世紀を目前に控えた現在、コミック界をめぐる状況は急激な変化に見舞われております。デジタル・メディアの急成長、流通・販売形態の変化等々、従来の、作家→出版社→書店→読者という流れ以外の、様々な形での情報の発信・流通が行われるようになってきました。

こうしたコミックを取り巻く環境の変化は、作家にとって作品創作の新しい可能性を開くものであり、また読者の方々にとっても新たな形で作品に接する機会が増えるという、歓迎すべき点もありますが、そこには、また、これまで読者の方々とともに築きあげてきたコミック文化の発展を阻害する要因も潜んでいます。

特に昨今の、新古書店と呼ばれる大型二次流通店の増加、コミック喫茶と称される施設の拡大は、漫画文化の発展を考えるうえで、大きな問題をはらんでおります。

それは、一言でいうと、そこでは、作家の著作権が全く無視されているということです。

従来、作家→出版社→書店→読者という形で作品が発信され、読者の方々が定価を支払っていただくことで、その出版活動が支えられ、その定価に含まれる著作権料を負担していただくことで、作家の創作活動が支えられてきました。しかし、この新たな二次流通の動きは、新古書店読者、コミック喫茶読者、という閉じられた輪でしかなく、従来の作家→読者→作家という連鎖態系を破壊するものなのです。

我々は、従来の古書店の存在を否定したり、店頭での立ち読み、回し読み等を決して非難するものではありません。古書店は文化であり、立ち読みは漫画に親しむ一形態であるからです。また、現在の流通形態が必ずしも最上であるとは考えておりませんし、上記のような二次流通形態が、漫画に対して読者を惹きつける新しい役目を果たしていることも理解しています。

しかし、ビジネスとしてこれほど大規模な二次流通が展開すると、漫画文化を支えるサイクルが壊され、結果として、作家の著作権が侵害されることになると言わざるを得ません。

著作権は、法律で擁護されている生活者としての作家の当然の権利であると同時に、新たな創作を支える源でもあります。作家との関連が全くない現在の二次流通の拡大というこの事態がこのまま進行すれば、漫画文化の荒廃・衰退を招くことは必至であります。これは我々作家の不幸であると同時に、読者の方々にとっての不幸でもあります。

良質のエンターテインメントを創造していくというのは我々に課せられた義務であると同時に心より望むことでもあります。また、その内容により淘汰されることは当然のことであり、我々の宿命と考えております。むしろ、読者のきびしい目にさらされてこそ、高水準の作品を残せると思っております。

しかし、そういった創作活動と隔たったところで、我々の権利が侵され、我々の立場が危うくなることにたいしては、抗議の声を上げざるを得ません。

以上のような事態を鑑み、我々は、読者の理解を得られるような形での、コミック作家の権利保障の再確認と権利の主張、さらには、新しい環境に対応できるような著作権法などの法改正を目指し、21世紀のコミック作家の権利とコミック文化を守るため、ここに、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」設立を宣言します。

平成12年4月26日
「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」賛同者一同